白い家
【
かなしいゆめのあと
】
The theme of this story is moral harassment
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Novel <第1章>
あの男…野々山彰彦は、その存在を柚菜に気が付かせる頃から、危機感をもって柚菜を苦しめたわけではない。
(お母さんに、新しい彼氏ができたみたい・・・。)
と思ったのはいつの頃だったか。たしか柚菜が中学二年生の冬の頃ではなかっただろうか。
だいたい彼ができるとすぐに分かるのだ。まず身なりを構うようになり、お肌のお手入れやら、ダイエットに励み出す。
何より目が輝いて・・・・その時母の目には、すべての事柄が生き生きとして、輝いて見えているのだろうと、柚菜は思うのだった。
そんな時は、まだ見ぬ彼に、柚菜はちょっとした嫉妬心を煽りたてられるような気持ちになるのだが、そんな事はおくびにも出さない。
「今度の人はどんな人なの?」
と、柚菜はニヤッと笑い、わかっているわよ。とばかりに、母をつついたりしたのだった。
その頃には、母と子供というより、人生を共に歩む同士のような関係になっていて、それを聞いた母はよくぞ聞いてくれました。とばかりに身を乗り出してくる。
「ゆずはカンがいいわねぇ。今度はいい人よ。私たちのこともまじめに考えてくれそうな・・・。でも会うのはちょっと待ってね。相手をよく見てからじゃなきゃ。」
言って母は鼻歌などを歌ってお肌のパックを念入りにしている。
「女はイヤよねぇ。手入れしなきゃどんどん劣化していくんだから・・・このシミみてよ。ああどうにかならないかしら。」
「お母さんは、まだまだ綺麗だよ。」
柚菜は、鏡台に映る母の姿を見やって言った。薄く染め、自然な感じにパーマがかかった髪は艶があって、体のスタイルも全然崩れていない。
柚菜が見ていてもまだまだ美しいと思うくらいだ。化粧を取って顔色の悪い素顔をみせてはいても、柚菜には太刀打ちできないくらいの大人の魅力があった。
「おべっか使っちゃって・・・何にも出ないわよ。」
答えながら、母はニッと笑う。
(今が一番いいときかな?いつまで持つだろう・・・。)
母の恋が一年以上保つことは少ないのを、柚菜は経験上知っていた。けれど、その新しい彼との付き合いだけは、長引いてゆく。
年を越し再婚話にまで続くなんてことになるなんて、その時は思いもしなかったのだった。
ちょうど、年があけた正月の時だったか。
いきなり柚菜の進学の話を持ちかけてきた時、二人の間にはっきり“再婚“という言葉が、出されている事がわかった。
「ゆず。高校の受験、私立受ける?H大付属高校なんてどうかしら。」
と、さりげなく聞いてきて、柚菜を仰天させるのである。
「H大付属って言ったら、すごいお嬢様校じゃないのよ。うち、そんなお金あるわけないじゃん。」
「お金の問題じゃなくて、学力の問題なのよ。あそこ一般入試で受けるとしたら、受かる力持ってる?」
言ったと時の母の、キラキラした瞳。
柚菜はその時、母の後ろに、例の彼…その時には野々村彰彦と言う名前を聞かされていて、その男の影を感じたのだった。
同時に、母と彼との再婚話までされているのを、直感的に感じた。そもそもこの頃には、野々村彰彦とは真剣交際していて、母自身の口からも、「ゆずの父親になってほしいわ。」なんて話もでたりしていたのだ。
そして、自分達の経済状態では、高校に行くことすらギリギリで、柚菜は自分でもバイトをしながら公立の高校に通う事になるくらいは、柚菜だって分かっていたのである。私立なんて,もっての外の話だった。
それなのに、母は柚菜に私立の、学費の高いので有名な、学校の名を口にした。
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ランジェリー
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白石かなな