白い家
【
かなしいゆめのあと
】
The theme of this story is moral harassment
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Novel <第四章>
開いた一ページ目に飛び込んできた赤ちゃんの写真。
柚菜は思わず、クラッとなって、アルバムを閉じかけてしまった。
母が生む事のできなかった赤ちゃんを、連想してしまったからだ。
けれど、柚菜はアルバムを閉じる事なく、ページをめくっていった。
ちいさな体は、両親の愛情を一杯に浴びて、泣いたり、ポヨンとした新生児特有のあどけない顔つきそのままの瞬間を、捉えていた。
写真の中の赤ちゃんは、どんどん成長してゆく。
アルバムは見やすいような状態に整理され、そこでの父が赤ちゃんを抱く姿も映し出されていた。
お花畑で撮られた家族3人の写真。
前の奥さんが赤ちゃんを抱き、輝くばかりの微笑を浮かべる瞬間を捉えた写真。
ヨチヨチと、歩き出したばかりの女の子。
スコップを持ち、泥だらけになって、カメラに笑いかける小さな彼女は、これから先の長い未来が凝縮されて、輝いていた。
長い未来?
そこまで思って、柚菜はハタと気付かされる。
(この女の子は、亡くなっているんだ…。)
それに気付いた時、柚菜は切なくなった。
天真爛漫に、笑顔を向けている彼女の未来はない。
そう思うと、アルバムを正視することが出来ず、柚菜はページをめくって一気に最後までたどり着くと、閉じた。
次のアルバムを手にとる時は、悩んでしまった。
けれども、ここまで見てしまったのだから、中途半端に見てしまうと、後になって気になって仕方がなくなってしまうだろうと思う。
柚菜は最後の方の、8と書かれたアルバムを手に取った。
開けると、2歳か3歳くらいの男の子がいた。
(隆仁だ!)
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白石かなな