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Novel <第四章>
 やんちゃざかりそのままの生き生きとした表情で、お姉ちゃんのものらしき自転車にまたがろうとしている。
 すっかり母親の落ち着きを身にまとい、少し年を重ねた前の奥さんの姿もあった。
 とはいえ、はじめに見た時の、儚げでひたむきな雰囲気は損なわれていない。
 まだまだ若い父もいた。着々とキャリアを積み上げて、相応に年を重ねた父の瞳の色は、自信に満ち溢れていて、そのままの姿が映し出されていた。
 女の子もいた。
 もう4・5歳に成長していて、前の奥さんに髪の毛をくくってもらったのだろう。頭に二つのおだんごがちょこんと乗っていて、顔を少しかしげて写る彼女の姿は例えようもなくかわいらしい。
 しかし、父の面差しに良く似た少女の姿が、そのまま仏壇に飾られている遺影に結びついてしまう。
 柚菜の心臓が我知らず高鳴ってしまうのは、どうしようもなかった。
 家族で旅行に行っている写真。バレイの発表会の様子なのか、愛らしいチュチュをまとった少女が、ポーズをとっている写真。
 ケーキの上に、4本のろうそくの火がともる。2本のケーキも写っている。
 はにかんだ表情で、幼稚園の制服を着た女の子を中心に、家族が居並ぶ。
 遠足で広げた弁当をほほばる彼女。家のガレージのある場所に置いた、子供用のプール遊ぶ子供達。
 運動会では、棒を持って走る少女の姿…。
 …そして唐突に、ある所で、写真がなくなり、ピタリと白紙になって、続きがなくなっているのだ。
 めくってもめくっても、家族の姿が見当たらない。
 あまりに空虚すぎる、その空白は、そのまま女の子が亡くなってしまった後の、野乃村家の家族像と、結びついてしまった。
 彼女は病気で亡くなったのだろうか。それとも事故で亡くなったのだろうか。
 柚菜はアルバムを持っていられなくなって、元に戻すのだった。その時、アルバムに隠れるようにして、一枚のDVDが置いてあるのに気付くのである。
 何気なしにまた、アルバムの時と同じ様に、手にとってしまう。
 何も書いていない。ケースにも中の本体にも…。
 不吉な予感がした。


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